【ハムストリングスとは?その働きは?~理学療法士が教えるヨガ解剖学vol.3~】
こんにちは。
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士の洋です。
淡路島でフェニックス・ライジング・ヨガセラピーの個人セッション(オンライン)やクリパルヨガクラス(対面・オンライン)を通して、体と心をつないで本当の私で生きていくことをサポートしています。
このヨガ解剖学では、ヨガに役立つ解剖学などの知識を理学療法士+ヨガ教師の視点で紹介しています。
専門家向けではなく、体についてこれまであまり勉強したことがない方向けのコラムです。
このコラムを読んで、体に興味が湧いたり、体を感じとるサポートになったら嬉しいです。
さてさて~(^^♪
理学療法士が教えるヨガ解剖学vol.2!今日のフォーカスマッスルは「ハムストリングスとは?」です!早速みていきましょう~。
ハムストリングスとは?
ハムストリングスとは、大腿の後面にある3つの筋の総称です。
前回の大腿四頭筋は大腿の前面にある筋肉でした。ですから、単純には拮抗筋です。
大腿二頭筋(長頭、短頭)、半腱様筋、半膜様筋のことを、まとめてハムストリングスといいます。
大腿二頭筋のことを外側(がいそく)ハムストリングス、半腱様筋、半膜様筋のことを内側(ないそく)ハムストリングスと呼びます。
臨床では、省略してハムストとか、ハムということもあります。
ハムストリングスはどこにある?
起始 | 停止 | 支配神経 | |
大腿二頭筋(長頭) | 坐骨結節、仙結節靭帯 | 腓骨頭 | 脛骨神経(L5~S3) |
(短頭) | 大腿骨粗線中央1/3の外側唇 | 腓骨神経(L5~S3) | |
半腱様筋 | 坐骨結節、仙結節靭帯 | 脛骨粗面内側に鵞足(がそく)として付着 | 脛骨神経(L4~S2) |
半膜様筋 | 坐骨結節 | 脛骨内側顆、斜膝窩靭帯膝窩筋の筋膜 | 脛骨神経(L4~S2) |
大腿二頭筋の短頭を除いて、他の3つの筋は骨盤~下腿(腓骨及び脛骨)に付着する二関節筋です。
股関節と膝関節をまたぎ、二つの関節に作用します。
一方、大腿二頭筋の短頭は大腿骨~腓骨に付着する単関節筋です。
またぐ関節は膝関節だけなので、作用も膝関節のみです。
<触ってみよう>坐骨結節を触ってみましょう!
ここで、ヨガをするあなたには、是非とも一度は自分で触って欲しい坐骨結節です。
なぜなら、坐骨結節には、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の3つの筋が起始として付着しているためです。
坐骨結節てヨガで座る時に必ず土台として意識しますよね。
「坐骨を下に押し下げて」ヨガクラスでも頻繁に耳にする声掛けですね。
その坐骨結節、どこにあるかイメージわきますか?わくわく
坐骨結節とは、座った時にお尻の下で体重を受ける部分です。
photo by AC
(骨盤を後方からみています)
股関節が伸びているとお尻の筋肉や脂肪で触れにくいので、座ってお尻の下に両手をあててみて下さい。
固い骨がすぐに触れるはずです。そこが坐骨結節です。
もし、わかりにくかったら、座って左右に体重を移動させてみると、わかると思います。
そこに大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の3つの二関節筋は付着してます。
そこを起点として、外側ハムと内側ハムはVの字に走行します。
そこから、手を遠位(太もも側)に移動させていくと、筋腹のあたりは、周りの組織との境目がわかりにくくなりますが、膝の近くになると再び細いスジのようになったハムストリングスに触れることもできますよ。
ハムストリングスはどんな働きをするの?
さぁ、ハムストリングスの触診もしたところで、次は働きを見ていきましょう。
筋の働きを考えたい場合、起始と停止が近づいていくと考えると、動きのイメージがわいてきます。
最初に載せたハムストリングスのイラストを見て、起始と停止が近づいていくと、どんな動きが股関節と膝関節に生まれるか。まず考えてみて下さいね。
すると、単純に股関節伸展と膝関節屈曲という動きのイメージが湧いてきますよね。
表にすると以下の通りです。
大腿二頭筋(長頭) | 二関節筋 | 股関節伸展と膝関節屈曲・外旋/矢状面内での骨盤の安定 |
(短頭) | 単関節筋 | 膝関節屈曲 |
半腱様筋 | 二関節筋 | 股関節伸展と膝関節屈曲・内旋/矢状面内での骨盤の安定 |
半膜様筋 | 二関節筋 | 股関節伸展と膝関節屈曲・内旋/矢状面内での骨盤の安定 |
*屈曲とは曲げる動き、伸展とは伸ばす動きのことです。
*外旋とは、前面が外方に回転する運動、内旋とは前面が内方に回転する運動のことです。
でも、今日はこの段階で是非お伝えしときたいことがあるんです!
起始と停止はどちらか一方が動くことが多い
先ほど、起始と停止が近づくことを考えると、動きのイメージが湧きます、と書きました。
確かにそれは、間違いないんですが、実際に、特にハムストリングスの場合は、起始と停止の両方が同時に動いていくことは少なく、どちらか一方が動くことが多いのです。
だって、起始と停止両方が動いてしまったら体は不安定になるでしょう。
どちらかが動かずに固定されていて、もう一方だけが動く、その方が筋は効率よく働くことができます。
その視点でハムストリングスをもう一度考えてみます。
ハムストリングスの働き1:膝関節屈曲
これは、ハムストリングスの起始である坐骨結節側は動かず、停止である下腿側が起始に近づいてきた場合に生じる動きです。
例えば、日常生活の中では、立って靴を履いて、踵を靴に入れる時です。コレ、わかりやすいですよね!(やってみて下さいね)
ハムストリングスの働き2:骨盤後傾(股関節伸展)
こちらは、停止である下腿側は動かずに、起始である坐骨結節側が動いて近づいてきた場合に生じる動きです。
ただ、この動きを日常生活の中で散々探したのですが、なかなかに難しく。
しいて言えば…日常生活の動きではないですが、仰向けで膝を立ててお尻をあげるブリッジ運動(ヨガでいうセツバンダアーサナ)。
<やってみよう>お尻あげ(セツバンダアーサナ)で、お尻が床から浮く直前に何が起きているのか、感じてみよう!
(写真の黄色の☆は坐骨結節です。黄色はハムストリングス。骨盤が見やすいようにバンザイしてます)
お尻が上がり始める直前の足裏を床にぐっと押し付ける、この時に骨盤が後傾してますね。(股関節は屈曲位から少しだけ伸展します)
この一瞬は、ハムストリングスの収縮で坐骨が引っ張られる感覚が、わかりやすいように思います。
是非、何度もお尻があがる直前までをやってみて、ハムストリングスによる骨盤後傾(股関節伸展)を感じてみて下さいね。
(お尻が上がり始めてからも、ハムストリングスは働いていますが、他の筋の収縮も増え、膝も股関節も動くので、説明が難しいので、ここでは省きます)
ハムストリングスの働き3:内外旋
今までに出てきたことがない、内旋・外旋というねじれの動きが出てきましたよ~。厄介だな…
これは、あまり細かく話すとマニアックになるので、ちょこっとだけ。
ハムストリングスは次(左の図)のように大腿後面に坐骨~下腿に主に付着しています。
(右からみたイラストです)
これを上からみたイラストがこちらです。(椅子に座って膝は90度屈曲した状態のイラストです)
坐骨結節に起始を持ち、腓骨頭や脛骨内側に付着します。
例えば、外側ハムの大腿二頭筋だけが収縮したとします。
坐骨結節は動かず、腓骨頭が坐骨結節に近づいてくるイメージです。
すると、どうでしょう?
腓骨頭が後方に引かれて、下腿は外旋します。
逆に、イラストには描いていませんが、内側にある半腱様筋・半膜様筋だけが収縮すると、脛骨内側が後方に引かれ、下腿は内旋します。
膝の回旋は元々大きく動く可動域はないので、ハムストリングスが働いても回旋の動きはわずかです。
今は、説明のために膝を90度屈曲の座位で書きましたが、膝が伸びていっても、ある程度は似たようなことが起きます。
つまり、ハムストリングスの内側と外側のバランスが崩れると、下腿の回旋(ねじれ)が生じます。
ただ、文献によっては、大腿骨にも同じように回旋が生じる、と書いてあるものもあるんです。
だがしかし・・・。
これは、あくまで私の臨床経験から感じることですが。
ハムストリングスの収縮で大腿骨にも回旋が生じるか、というと微妙だな、と思うのです。
影響は0ではないかもしれないけど、ハムストリングス以外にも大腿骨を回旋させる筋というのはいくつもあります。
また、ハムストリングスは大腿二頭筋短頭以外は、大腿骨には付着していないので、ハムストリングスの影響で大腿骨が回旋する、とは言いきれないのでは?というのが個人的な考えです。
ハムストリングスの働きは主に膝、股関節の屈伸ですが、少しだけねじれにも関係する、と思っておいて下さい。
ハムストリングスの働き4:矢状面内での骨盤の安定
これは、先ほどの働き2の「股関節伸展(骨盤後傾)」と少し似ています。
ただ、意味あいは、骨盤の安定なので、2とは区別しています。
この説明は、一番最後に前屈と絡めてしますので、ここではスルーします。
まとめ
今日は、ハムストリングスの基本、形や走行、働きをお話しました。
この後、ヨガポーズでハムストリングスを感じよう!は次回5月15日(土)に配信します。バッタのポーズが登場する予定です。
今日も、ここまでお読み頂きありがとうございました~。
<募集中>
ヨガ解剖学では、今後扱ってほしい内容を募集しています。お答えできない場合もあるかもしれませんが、できる範囲で回答していこうと思います。気になっている解剖学のことなどあったら、教えてもらえたら嬉しいです。お待ちしています^^
<こちらもいかがですか?>
理学療法士が教えるヨガ解剖学vol.1~大腿四頭筋~←人気です!
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<参考文献>
(1) I.A.KAPANDJI、カパンディ関節の生理学Ⅱ下肢、医歯薬出版株式会社、1998年、p44~45
(2)中村隆一 他、基礎運動学第4版、医歯薬出版株式会社、1998年、p291
(3)Michawl Schunke 他、プロメテウス解剖学アトラス 解放学総論/運動器系、医学書院、2009年、p430~431
(4)奈良勲 監修、運動療法学総論、医学書院、2003年、p31
(5)STANLEY HOPPENFELD、図解 四肢と脊柱の診かた、医歯薬出版株式会社、1998年、p141~142
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士 洋
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