【ハムストリングスを感じるヨガポーズとは?~理学療法士が教えるヨガ解剖学vol.4~】
こんにちは。
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士の洋です。
淡路島でフェニックス・ライジング・ヨガセラピーの個人セッション(オンライン)やクリパルヨガクラス(対面・オンライン)を通して、体と心をつないで本当の私で生きていくことをサポートしています。
このヨガ解剖学では、ヨガに役立つ解剖学などの知識を理学療法士+ヨガ教師の視点で紹介しています。
専門家向けではなく、体についてこれまであまり勉強したことがない方向けのコラムです。
このコラムを読んで、体に興味が湧いたり、体を感じとるサポートになったら嬉しいです。
さてさて~(^^♪
前回のハムストリングスとは?の続きです。
今日は、ハムストリングスを感じるヨガポーズを紹介します!早速みていきましょう~。
ハムストリングスを感じるヨガポーズとは?
ハムストリングスを感じるヨガポーズはいくつもありますが、今日は2つ紹介します。一つ目はシンプルにカポタアーサナです!
カポタアーサナ
<カポタアーサナ>後屈バージョン
1.よつばいから右膝を両手の間について、つま先を左側に向けます。
2.左足を後方に伸ばし、骨盤を床に近づけます。(この時、右側の坐骨が床から浮いてしまうようなら、坐骨の下にブランケットなどを挟んで、骨盤が左右同じ高さになるように調整をして下さい)
3.両手を床について、息を吸って胸を開いて。吐きながら肩回りや股関節周りの余計な力を抜いて。
4.次の吸う息で左膝を曲げて(求心性収縮)、持てるようだったら左手で足の指や足首を持って。吐いて一呼吸。(手が足に届かないようだったら、膝を屈伸するだけで構いません)
5.左膝を伸ばして(遠心性収縮)、前足を後ろに戻してよつばいに戻ります。
ハムストリングスを使うのは、4の後ろに伸びてる足を膝から曲げてくるところが、ハムストリングスの求心性収縮(黄色の矢印)です。(求心性収縮とは、筋の長さが短くなり、起始と停止が近づくような筋収縮です)
5の曲げてた膝をゆっくり伸ばす時は、ハムストリングスの遠心性収縮(オレンジの矢印)です。膝から下の重さをハムストリングスが支えながらゆっくり膝を伸ばしてきています。(遠心性収縮というのは、筋が伸張され、起始と停止が遠のくような筋収縮です)
4と5の間で、足首を手で持ってしまった時は、持つことで膝の屈曲は保たれてしまいます。
そのため、ハムストリングスの働きはかなり抜けてしまいます。
手で足を持った時のもも裏の様子と、手を離した時のもも裏の様子。また、膝を曲げる角度でどんな感じ方の違いがあるか。
是非、感じてみて下さいね。
バッタ(今日のメイン)
ここでは、ハムストリングスに集中するために両足ではなく、片脚を上げる半バッタで行っていきます。
<やってみよう>ハムストリングスに注目しながら、半バッタをしてみましょう!
<半バッタ>
1.うつ伏せになります。恥骨が床に直接あたって気になるようだったら、骨盤下にブランケットなどを敷いて、あたる部分をケアして下さい。両手は体側に、手のひらが下になるようにおいて。顔は、顎かおでこを床におきます。
2.息を吸って、吐きながら恥骨を床に押し当てます。
3.吸う息で足先を下へ、頭頂上押し出して、体を上下に十分伸ばして。
4.次の吐く息で、そのまま体は伸びながら、少しずつ太ももが床から浮いてきます(求心性収縮)
5.ある程度太ももが床から浮いたところで、大きく一呼吸。
6.吐く息で、そのままの伸びながら、遠くの床に足先を下ろすようにして(遠心性収縮)
7.足全体が床に下りてきたら、顔は左右どちらかに向けて、全身の力を抜いて。
どうですか?ハムストリングスの働き感じとれました?
では、1つずつ見ていきましょう~。
1.うつ伏せになります。ポーズに入る前の準備です。
2.息を吸って、吐きながら恥骨を床に押し当てます。
ここは、クリパルヨガでいうところの、土台を安定せるところです。
恥骨を床に押し当てる、という指示の時に体にはどんな反応や動きが生じているでしょうか。
先に種明かししちゃいますが、ここからすでにハムストリングスが働き始めています!
恥骨を床に押し当てる時は、骨盤が若干後傾する動きが生まれます。
お腹や太ももの前、後ろ、お尻など、骨盤を中心として、骨盤に付着する筋肉の緊張がギュッと高まりますよね。
この動きは、前回の投稿でハムストリングスとは?の3.3ハムストリングスの働き2(骨盤後傾)にあたります!
ただ、動きの角度としてはわずかです。
3.吸う息で足先を下へ、頭頂上押し出して、体を上下に十分伸ばして。
足先を下へ押し出すことで、ふくらはぎや足の指、ももの前など脚全体に力がみなぎりますね。
この2~3でしてることは、この後4で太ももが床から浮いていくために、すごく大事な準備なんです!ここが今日の一番大きなポイントです!
ハムストリングスの主な働きは、膝関節の屈曲でした。
でも、バッタでは膝関節は屈曲せず、基本的には伸展位です。
そう!バッタではハムストリングスが、股関節の伸展筋として働いているんです!
股関節伸展筋には、まだこのヨガ解剖学には登場してませんが、大殿筋というお尻の大きな筋肉があります。
ちょっとだけ大殿筋を紹介しますが、大殿筋は身体で最も強大な筋で、ハムストリングスの1.5倍の力を持ちます。
でも、バッタの時には、大殿筋だけではなく、ハムストリングスも股関節の伸展に参加するんです。
バッタの時は、股関節から下の脚の重さ全部を床から持ち上げないといけないんです。
片脚の重さって、どのくらいあるかご存じですか?
大腿・下腿・足で平均17~18%(男性:17.25%、女性:18%)の質量があります。
これを自分の体重で計算してみて下さい。
50kgの女性で9㎏ですよ!お米10㎏を1㎏減した重さです。
それをバッタの時には重力に抗して、床から持ち上げようとしてるんです。
すごいと思いません!?
その重たい脚を持ち上げるために、ハムストリングスも運動に参加するんですね~。
大事なのはここからです。
ハムストリングスがどんな風に作用するかは、膝の肢位に左右されます。
つまり、ハムストリングスの作用は、膝を伸展位に固定すれば、股関節伸展作用が強くなります。
そう!2~3でももの前側、大腿四頭筋に収縮が入ってましたよね!
膝伸展位に固定されてましたよね!
ここがバッタのミソなんです!
赤いラインが大腿四頭筋で膝を伸展位にします。黄色のラインはハムストリングスで股関節を伸展します。
この大腿四頭筋(赤いライン)の働きがなかったら、ハムストリングスは効率的に股関節を伸展させることができません!
ですから、大腿四頭筋は普段はハムストリングスの拮抗筋ですが、ここでは共同筋なんです!
正反対のことをする筋肉ではなく、共同作業をしてるんです。(大腿四頭筋なんていいヤツ)
筋肉は時として、拮抗筋になったり、共同筋になったりします。
その時々に応じて、役割を変えるんです。
面白いくないですか!?
バッタのポーズて、見た目としては、ただ脚を床から持ち上げるだけのシンプルで地味なポーズです。
映えなくて、キツイからみんなあまりしたがりません。
でも、やってみるとすごくエネルギーを感じますよね。
体の熱が上がったり、集中したり。
リリース後の解放感が半端なかったり。
それには、脚を上げていく前の体の様々な準備と、筋同士が共同して体に向かっているからこそ可能になっているという背景があったんですね~。
そういう見方もあると知ると、バッタが面白くなってきませんか!?
ポーズに入る前の小さな体の準備にも、注意を向けたくなってきちゃうでしょう?
是非、何度もトライしてみて下さいね~。
今日は半バッタで解説しましたが、両側一緒に脚を床から浮かしていくバッタも是非、体験してみて下さいね!
まとめ
ハムストリングスを感じるヨガポーズとして、カポタアーサナとバッタのポーズを紹介しました。
バッタのポーズでは、ハムストリングスが効率よく股関節の伸展筋として作用するために、大腿前面の大腿四頭筋が共同筋として作用していることも内容に含めました。
今回の内容に含めようと予定していた、ハムストリングスの働きで骨盤の矢状面内での安定、という内容は、次回こそ!前屈と絡めてお話します。
次回の配信は、5月22日(土)「前屈」です。
楽しみにしていて下さいね^^
あとがき
今日も、ここまでお読み頂きありがとうございました~。ヨガポーズでハムストリングス、感じとれましたか?
ここでは、ヨガポーズのどの瞬間にハムストリングスが働くかをお伝えしてますが、実際ヨガをする時には、あまり考えないで大丈夫ですからね。
大切なのは、分析して理解することよりも、自分の体とつながって感じとることです。
イラストや写真に文字や矢印を書き込んで、わかりやすくしたいんですが、難しいですね~。
イラスト問題、ちょっと検討しなくっちゃ。
また、来週お会いしましょう~(^^♪
<募集中>
ヨガ解剖学では、今後扱ってほしい内容を募集しています。お答えできない場合もあるかもしれませんが、できる範囲で回答していこうと思います。気になっている解剖学のことなどあったら、教えてもらえたら嬉しいです。お待ちしています^^
<こちらもいかがですか?>
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<参考文献>
(1) I.A.KAPANDJI、カパンディ関節の生理学Ⅱ下肢、医歯薬出版株式会社、1998年、p44~45
(2)中村隆一 他、基礎運動学第4版、医歯薬出版株式会社、1998年、p291
(3)Michawl Schunke 他、プロメテウス解剖学アトラス 解放学総論/運動器系、医学書院、2009年、p430~431
(4)奈良勲 監修、運動療法学総論、医学書院、2003年、p31
(5)STANLEY HOPPENFELD、図解 四肢と脊柱の診かた、医歯薬出版株式会社、1998年、p141~142
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士 洋
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