【胸椎の動きは○○とセット】理学療法士が教えるヨガ解剖学vol.11
こんにちは~。
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士の洋です。
淡路島でフェニックス・ライジング・ヨガセラピー(PRYT)の個人セッション(オンライン)やクリパルヨガクラス(対面・オンライン)を行っています。
ヨガセラピーやヨガを通して体と心をつないで、本当の私で生きていくことをサポートしています。
このヨガ解剖学では、ヨガに役立つ解剖学などの知識を理学療法士×ヨガ教師の視点で紹介しています。
専門家向けではなく、体についてこれまであまり勉強したことがない方向けのコラムです。
このコラムを読んで、体に興味が湧いたり、体を感じとるサポートになったら嬉しいです。
さてさて(^^♪
そこで、関節の参考可動域も書いたんだけど、背骨(脊柱)の参考可動域のところで。
…ん?コレを載せるのは、なんか違和感。
そう思って、あえて載せませんでした。
背骨といえば・・・私の中では「The 胸椎!」なんです。(笑)
パソコンやスマホなど、現代人の胸椎はか~た~い~!
あなたは、自分の姿を鏡で見て、猫背だな~と思うことありません?
そう思っても、姿勢をよくしようとすると、腰が痛くなる(-_-;)
あるある、そういうこと。
背骨って、一言にいっても、場所によってある程度特徴があるんです。
元々動きやすいところ、動きにくいところ。
その特徴をしった上で、大切なのはバランスです!
今日は、そんな胸椎にフォーカスしてみます。
相変わらずマニアックになる予定なので、よろしくお願いしまーす♪
そもそも、背骨って一言で言うけど、どんなものかご存じですか!?
背骨とは?
背骨は、骨盤から上に伸びあがる体を支える柱のような存在ですね。
背骨は、脊柱(せきちゅう)といいます。
脊柱は、椎骨と呼ばれる骨が全部で24個、積木のように積み重なってできています。
(イラスト by AC)
頚椎 7個
胸椎 12個
腰椎 5個
仙骨
尾骨
頚椎、胸椎、腰椎はそれぞれ形が少しずつ違うけれど、今日はその点の説明は省きます。
仙骨の上に24個の椎骨が積み重なった脊柱。
でも、完全に一本柱で全く動きがでない訳ではないの。
脊柱、動きますよね、これは実感としてありますよね。
背中丸めたり、反らしたり、体を左右に倒したり、ねじったり。
色んな動きができます。
その脊柱の動きを理学療法士が評価する場合には、頸部だけは別で考えるけど、胸腰部は一つとして考えるんです。
つまり、胸腰部はおおざっぱに体幹として捉えて、動きを見るわけです。
これは、可動域を測る時の決まり事なので仕方ないんだけど…。
でも、これ、おおざっぱすぎる気がしません!?
確かに、胸椎と腰椎をわけて可動域を計測することは、現実的に難しい。
でも。
胸椎と腰椎の動き方、元々持つ動きのポテンシャルは全然違うんです。
なぜなら…
胸椎は、肋骨を経由して前方の胸骨につながってるから!!!
胸椎は、胸郭の一部なんです。
一方、腰椎は肋骨も胸骨もなく、側方や前方はフリー。
支え方や構造はまるで違うんです。
胸郭とは?
胸郭という新たな言葉が出てきました。
胸郭とは、胸椎と肋骨と胸骨で囲まれた空間のことをいいます。
胸郭には、心臓や肺の生命活動を維持するための重要な臓器が入ってます。
胸郭があるのは、心臓や肺が傷つけられては命に危険が及ぶから。
だから、その周りを胸郭が守ってるんです。
でも、胸郭は実は案外動きます!
呼吸の空気の出入りができるのは、胸郭に可動性があるためです。
胸郭に付着する肋間筋や横隔膜などの筋肉の働きで、胸腔内圧が変化して、胸郭が動いて、肺に空気が出入りしてるんです。
<やってみよう!>胸郭に両手をあてます。普通の呼吸と深呼吸をして、胸郭の動きを感じてみましょう。
胸郭の動きは、上部胸郭は前後方向に動き、下部胸郭は左右方向に動きます。
上部胸郭の前後方向への動きは「ポンプの柄のような動き」
体幹を横から見たのが左のイラストです。
こんな風に触って、動きを確認してみてね。
下部胸郭の左右方向への動きは「バケツの柄の動き」といわれます。
胸郭を前から見たのが左のイラストです。
こんな風に触って、動きを確認してね。
理学療法士が臨床で、胸郭の動きをアシストしたり、排痰を促す時には、この胸郭の基本的な動きに合わせてサポートをしてるんですね~。
腰椎と胸椎の動きのポテンシャル
とはいえ、胸椎と腰椎の動きのポテンシャルは、全く違います。(もう一度言います)
ざっくりというと、腰椎の可動性は大きく、胸椎の可動性は小さめです。
これは、ヨガでCat&Cowをした時などにも、感じますよね。
Cat(背中を丸めておへそをのぞき込むようにした状態)
Cow(背中を反らせた状態)
脊柱を反らすcow(牛)の時に腰椎と頚椎は反りやすいけど、胸椎は反りにくい。
だから、まず前提として、腰椎と頚椎は元々の動きのポテンシャルが大きいけど、胸椎は小さい。
それを、是非理解しておいてほしいんです。
そして、大切なのは動きのバランスです。
例えば、後屈する時。
腰椎や頚椎は後屈しやすい構造なんです。
でも、胸椎が全く後屈せずに、それを補う形で頚椎や腰椎が過剰に後屈すると、簡単に頚椎や腰椎を傷めます。
これ、ヨガをしてる人にとってもよく見かけます。
過剰運動性(hyper mobility)といいます。
例えば…
学校で掃除の時間に、すごくまじめに掃除をする子が3人、しゃべったり遊んだりして掃除をしてない子が7人いたとします。
掃除時間は決まってます。
掃除をしてない子たちは、最後まで掃除をしません。
すると、掃除を真面目にしてる3人は、頑張りますよね。
急いで、沢山動きます。
でも、掃除を頑張った3人は、掃除の後で疲れてしまう。
そして、この構図は一日だけじゃなくて、その後も続く。
すると、どうなるでしょう?
頑張って掃除をしてる子たちにストレスが溜まりますよね。ムッキー
疲れて、その後の授業に集中できなにかもしれないですよね。ぐったり
頑張って掃除をしてる3人の負担を減らすためには、どうしたらいいでしょう?
掃除をしてない子たちにも、掃除してもらう。
みんなで負担を分け合う、バランスをとることが必要ですよね。
そうすると、一人当たりにかかるストレスは減ります。
こんな感じです。
いい例えだったでしょ。むふふ。
これと同じことが脊柱でも起きるんです。
胸椎は元々持ってる動きのポテンシャルは、たしかに少ない。
でも、全く動かなくなってしまうと、腰椎や頚椎が補おうと頑張るんです。
それが1回ならまだいいけど、それはその後も何度も、いつもその構図になってしまう。
すると、胸椎はますます固くなり、動きが鈍くなり、頚椎や腰椎にはいつも負担がかかって、しまいには悲鳴をあげる。
だから、バランスが大切なんです!
胸椎は、動きが小さいという元々の特性も理解した上で、でも、胸椎にも動きを負担してもらう。
だから、腰椎と頚椎に挟まれた胸椎の動きって実はものすっごく大切なんです!
胸椎でまず大切な動き
もう少し胸椎について、掘り下げてみます。
脊柱のイラストをもう一度みて下さい。
脊柱には、生理的彎曲といって、S字カーブがあります。
頚椎は前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯です。
これによって、脊柱は衝撃を和らげたり、重たい頭を支えているんですね。
でも。
現代人は、日常の様々な動作の中で胸椎の後弯を強めるような姿勢や動きを多くしてます。
例えば、パソコン、スマホ、デスクワークなどなど。
他にも、抱っこや料理、畑仕事なども胸椎を後弯させて行う動きです。
高齢になった方の背中が丸まってくるのを見てもわかるように、加齢によっても胸椎の後弯は強まりますね。
だから、胸椎の動きでまず大切なのは、伸展です!
(あくまで私の考えです)
ただ、高齢の方や長年の内服の影響で骨粗しょう症のある方が、急激に脊柱を反らそうとすると、圧迫骨折を起こします。
この点は、十分にご注意下さい!!!
(動かして大丈夫かわからない場合は、お医者さんに必ず聞いてみて下さいね。)
そして、ここからがもう一つ、大切なポイントです。
先ほども書いたように、胸椎は、胸郭の一部です。
だから、胸椎が動く時には胸郭も動く
逆に、胸郭が動く時には胸椎も動くんです。
言い換えると、胸椎が固い時は胸郭も固いんです。
ということは?
どっちから動かしていっても影響し合う、という意味です。
私は学生の時から胸郭が固い、と言われてきてたんですよね。
それは、ヨガをするようになって、胸椎の固さとしてもすっごく感じてるんです。
胸椎が動かなくて、できないポーズが沢山あります。
でも、それが時たまプラクティスが終わった時に、「あれ?」て思うことがあるんです。
胸郭が動く、呼吸がめっちゃ入る!
これ、ホント自分にしかわからない感覚なんですが、気道に入る空気が違う時があるんですよ!
ヨガって、脊柱も動かすけど、常に動きと呼吸がセットになってますよね。
ヨガをして、自然と呼吸が深まった体験をしたことがある人、沢山いると思うんです。
だから、胸椎・胸郭に意識が向いたら、同時に呼吸にも意識を向けてみて下さいね。
だって、胸椎の動きは胸郭とセットだから。
胸郭は、呼吸で必ず広がったり、すぼまったり、動く場所だから。
でもね。
もう一つだけ言わせて!
呼吸は、胸郭だけでしてるんじゃないんです。
腹なんです!
ふぅ。
これ以上は長くなるので、今日はここまでにしま~す。
面白くないです!?胸椎・胸郭・呼吸、そして腹。
まとめ
脊柱の構造や生理的彎曲について説明しました。
脊柱は、頚椎と腰椎は動きのポテンシャルが大きく、胸椎は胸郭の一部でもあるため、動きのポテンシャルは小さいという特性を持っていました。
胸椎は構造上、動きが小さい特徴はあるものの、あまりにも動きが乏しくなると、頚椎や腰椎の過剰運動性を招き、怪我や障害にもつながることから、胸椎の運動性は大切でした。
現代人は、胸椎後弯の強まる姿勢や日常での動きが多く、胸椎伸展は大切な動きであることも、説明に含めました。
あとがき
今日も、ここまでお読み頂きありがとうございました~!
ヨガをしてると、私自身の体からも胸椎について感じることがよくあるし、ティーチングをしてても気になることが度々あって、今回まとめました。
次回は、胸椎や胸郭が固くなった時の弊害や、胸椎の動きを促すヨガポーズ、ヨガ教師として生徒さんの動きを見る時のポイントなど、具体的に紹介しま~す。
楽しみにしていてくださいね♡
次回は、なににしようかな~?ネタ募集してま~す。↓↓↓
<募集中>
ヨガ解剖学では、今後扱ってほしい内容を募集しています。お答えできない場合もあるかもしれませんが、できる範囲で回答していこうと思います。気になっている解剖学のことなどあったら、教えてもらえたら嬉しいです。お待ちしています^^
<参考文献>
(1)宮川哲夫 著、動画でわかるスクイージング、中山書店、2010年、p54~55
(2)Michawl Schunke 他、プロメテウス解剖学アトラス 解放学総論/運動器系、医学書院、2009年、p38
(3)奈良勲 監修、運動療法学総論、医学書院、2003年、p22-23
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今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
体と心をつなぐヨガセラピスト×理学療法士 洋
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